人と企業を開花させる新規事業 
上場会社など100社支援の淺場理早子さん 
「仕組み知ればどこでも可能」

京都大学大学院特別講師
新規事業創出 新規事業人材育成の専門家
株式会社アドタグ 代表取締役 淺場理早子社長

取材 元西日本新聞記者 水山真人

企業の成長可能性を開花させる新規事業は、仕組みを知れば、どこでも可能―。そんな考えで、上場企業を中心に100社以上の新規事業開発を支援してきた株式会社アドタグ社長の淺場理早子さん。自身がドレスのシェアリングサービスによって起業した経験と理論を基に、ワークショップ型研修や伴走型支援を行う。開発の仕組みや議論の土台を学ぶことで、注目の事業が生まれたり、次世代リーダーが育っていったりしているという。京都大学大学院などで教育活動も担ってきた淺場さんは「不確実性の時代だからこそ、新規事業の開発が大切で、それを通じて人や企業の成長を見られるのがうれしい」と語った。


🎤 第13回「解決市場」 登壇直前特別インタビュー

「手が止まってしまう」企業を支える

「アドタグは当初、スタートアップのマーケティング支援を行っていました。その中で、新たなビジネスを始める際『何から手をつければいいか分からず、手が止まってしまう』という相談を数多く受けました。私が役に立てるのではと思っていたところ、2021年にUdemy(世界最大級のオンライン学習プラットフォーム)に新規事業講座をつくりました。これを機に、2022年から本格的に研修や伴走支援の会社として走り出しました」。「プログラムのベースは、『24時間ビジネスプラン』という、24時間で事業計画を書ききるパッケージです。実際に良いアイデアが出てくれば、事業化へ持っていく伴走支援をさせていただいています。この4年でお取引先は100社を超え、上場企業が7割を超えています」


社員が成長し、経営企画の視点

「最初は『新規事業って何?』という方でも、まず1行のアイデア出しから始めます。それを深掘りしてコンセプトに落とし込み、想定している顧客の課題やニーズが本当に存在するか検証していきます。さらに市場分析や競合分析を経て、マネタイズの検討や4P(製品、価格、流通、販促)の戦略、オペレーションの体制まで考え、最後は数値シミュレーションまでやってもらい、経営企画が作るような資料を実際に自分の手で作ります」。「真っ白な状態から1枚のプレゼン資料を作り上げていただくと、『こうやって考えていけば立ち上がるんだ』と、売上を作る第一歩までの世界観が見えるようになります。

今まで研究や分析しか担わなかった人たちが、マーケティングやビジネスモデルを勉強していくことによって、視野が広がったとよく言われます」。「研修の初日は、会社から言われて参加し『めんどくさいな』という態度の方も正直いらっしゃいます。ですが、ワークをやっていく中で『できない』と気づくタイミングが訪れます。私はこれを『自己認識力』と呼んでいますが、自分の位置を研修の冒頭あたりで一旦確認ができると、その後は本当に素直になり、成長は早いです。教育というのはこういうことなんだろうな、と最近みんなの変化を見ながら思っています」


たった1か月でヒット商品企画

「多くの企業さんで、新規事業の担当者は1人しかいないケースがほとんどです。赤字スタートの新規事業に十分な人数を割けないという事情もあり、担当者がたった1人で放り出されています。そうすると、事業計画として形にならず、役員承認まで行かないという問題が起きてしまいます。そこに私たちが入り、研修しながらも伴走して、一緒に事業計画を書き上げていきます」「ある企業さんでは、就業時間の2割以下しか新規事業に割けず、資料も満足に書けなかった担当者がいたのですが、2週間に1回の面談のたびに資料の精度が格段に上がっていきました。役員会にそのまま出せるレベルにまで、たった1か月で人は変われるんです。

承認が降りて、そのままリリースされた事業はニュースになり、新聞やテレビの取材が来ました。ご本人がテレビに出ているのを見た時は、感動しました。その後も『事業がこのラインを超えました』と定期的に報告をくださります。事業が成長すると同時に、人が成長していく姿を見るのは本当に喜ばしいです。私は12歳で教育に携わりたいと思ったのですが、今まさに、そういう仕事をさせていただくことになっています」


トップ企業は全社的な議論の土台に

「今、売上高数兆円規模の超大手企業などは、新規事業部だけでなく、課長研修や部長研修といった階層別研修に、新規事業や事業計画作成の内容を組み込んでいます。これは、全社員が『共通の理論』を知ることで、社内で質の高い議論ができる状態を作るためです」。「事業の可能性という意味では、様々な新規事業のパターンがあります。例えば、B2Bの会社では、これまでの技術を使って、少し飛び地のB2C向けの高価な商品を作るパターンの支援をしています。ハードを扱う建設会社では、『建てて終わり』ではなくて、その後のソフトの部分も合わせた展開が考えられます。業界の横断も考えられ、大きな成長可能性を秘めている会社がたくさんあると思っています」

「人の可能性という意味では、ほとんどの方が『才能』じゃなくて『仕組み』があれば新規事業はできると思っています。ビジネスプランコンテストのような仕組みや構造を作っていくことと、理論を教えてあげることによって、人の能力も開花すると思っています」


自身の起業は「仮説検証」の連続

「私自身の失敗の経験も、今の指導に欠かせないパーツになっています。2008年の創業時、まだスマホアプリが普及していない時代に、現在のメルカリのようなC2Cサービスを作り始めてしまい、いきなり900万円を失いました。でも諦めず、仕入れ資金をかけず、クローゼットに眠る服を預かる『委託レンタル』の仕組みを考えました。当初はアプリでやろうとしてダメになり、『商品を見ないと借りられない』と気づいてからは店舗を作りました。すると1か月目に、口コミと手書きのチラシだけで売上が90数万円に達しました」「そこからも軌道修正の連続。売れ筋のドレスはずっと人気ですが、出ないものは不良在庫になる。それなら、売れるパターンが分かった時点で自分たちで仕入れてしまおう、と。こうした泥臭い苦労と仮説検証の繰り返しが、今の私の理論の根底にあります」


新規事業開発は「リーダー育成」

「今の不確実性が高すぎる時代、決まったタスクをこなすだけの人材ばかり抱えていると、企業の成長は止まってしまいます。自ら新しい事業を作り、売上を作っていける人材を育てることは、会社を背負う『後継者を育てること』とイコールだと私は考えています」
「最近は生成AIが出てきて強く思いますが、ツールが同じでも、インプットする人の思考力が違うと、アウトプットのレベルが100段くらい変わってしまいます。自分で具体的に言語化して命令しなければいけない。これはリーダーやトップマネジメントに必要な能力と全く一緒です。新規事業に関わることで、経営に近い考え方ができる人を増やし、企業の持続的な成長を支えていく。そんな思いで、研修の場では時に温かく見守り、時に厳しくお尻を叩く。それが私の使命だと思っています」


略歴 

2017年に株式会社アドタグを創業し、代表取締役。2009年に衣装レンタル事業会社㈱C‘zを起業した経験と理論を基に、新規事業研修・コンサルティングを行う。
その教育的な側面が注目され、京都大学大学院、名古屋大学、静岡大学、情報経営イノーション専門職大学などでの講義実績多数。
また、2023年より東京都政策連携団体「GovTech東京」理事や、2025年より社会課題の解決に取り組むNPO向け基金「みてね基金」評議員も務めている。
国際基督教大学卒業。グロービス経営大学院卒業(MBA)。North Western Univ.ケロッグ経営大学院 統合マーケティング短期留学。レイス㈱、横浜ゴム㈱グループで新規事業営業、新規事業立ち上げに参画。㈱ミクシィで求人プラットフォーム事業の事業部長兼IPO準備。

第13回解決市場特別講演

京都大学大学院特別講師
新規事業創出・人材育成の専門家 
株式会社アドタグ 代表取締役 淺場理早子(あさばりさこ)氏

後継者が育つ会社は何が違うのか?
“新規事業” を使った実践的育成法

2026年5月27日(水)13:30~14:20 エルガーラホール8F(福岡市中央区天神1丁目4-1)