コールセンターの課題に、AIという現実解。
TACT「AIコンシェルジュ」が成果を出せる理由
『AIコンシェルジュがコールセンターを変える』著者
TACT株式会社 溝辺和広社長 FOCUSインタビュー
TACT株式会社は、USEN&U-NEXT GROUPの一員として、企業や自治体のコールセンター運営を支援している。受託運営にとどまらず、電話自動応答AI「AIコンシェルジュ」やチャットボット、RPAなどを組み合わせ、電話対応業務全体の最適化を手がけるのが特徴だ。
2026年3月には代表取締役社長・溝辺和広氏の著書『AIコンシェルジュがコールセンターを変える』(ダイヤモンド社)も刊行された。コールセンターが抱える課題と、その解決策を溝辺氏に聞いた。
「人手不足」「品質要求」「コスト構造」
コールセンターの課題を解決するAIコンシェルジュ
Q1 | コールセンターを運営する事業者は今、どのような課題に直面しているのでしょうか。
溝辺 一番多く聞くのは、やはり採用の悩みです。人がいない、採用できない。そして、せっかく採用できても定着しない。コールセンターの仕事は、マニュアルに沿って同じ内容を話し続ける場面が多く、覚えることも多い。特にクレーム対応はオペレーターにとって負担が大きく、「自分には無理だ」と早期に辞めてしまうケースが少なくありません。一方で人件費は上がり続けていますし、繁忙期には入電が集中して電話がつながらず、顧客離れにもつながります。労働力不足が進むこれからの時代、人の力だけでコールセンターを維持していくのは、ますます難しくなっていくはずです。
顧客対応に対する品質要求の向上も課題です。SNS全盛の現在においては、企業の顧客対応は容易に可視化・拡散されるため、対応を一つ間違えば企業ブランドの毀損につながります。結果としてオペレーターには高い専門性に加えてお客様対応のための「感情労働」も求められる。現場の負荷は限界に近づいています。
さらにコスト構造の問題もあります。例えば、5,000円の商品を販売して、利益が2,000円だとします。その商品について1時間の電話対応が発生すれば、コールセンターの人件費で利益は簡単に飛んでしまう。それでも電話窓口は必要ですから、コストをかけざるを得ない。このような状況下で企業が持続的に成長するためには、単なる効率化だけでなく「顧客体験の質」と「生産性」を同時に高める仕組みが必要です。
Q2 | そうした課題に対して、「AIコンシェルジュ」はどのような価値をもたらすのでしょうか。
溝辺 AIコンシェルジュはコールセンターのAI化を実現します。特に中核となるのが、音声による自然な対話を可能にする「ボイスボット」です。ボイスボットは音声認識や意図解釈、音声合成などのAI技術を活用して、電話での顧客対応を自動化します。オペレーターに代わって問い合わせ内容を確認するほか、AIがお客様に架電することも可能です。
AIコンシェルジュが活用できる領域は多岐にわたります。あふれ呼対応やFAQへの自動回答、注文受付といったインバウンドだけでなく、督促やリマインド、重要事項説明といったアウトバウンドにも対応できます。
先ほど申し上げたコールセンターの課題解決において、AIコンシェルジュは強い武器となります。人とAIの協働によって「生産性向上」「顧客満足と従業員満足の両立」「財務体質の改善」という3つの目標を現実的に達成できる手段です。
ただし、単にAIを入れればコールセンターの課題がすべて解決するわけではありません。人が担当すべきところは人が担い、逆に定型的な業務はAIに任せる。また、業務を適切に分析・把握したうえで、効果が出る領域にAIを入れる。業務に合わせてAIを適切にチューニングする。これらまで含めてサービスを提供しているのが、当社の特徴です。
「ガイダンス設計」がAI導入の成否を分ける
Q3 | 御社では、サービス導入にあたって、企業ごとのカスタマイズやチューニングを重視されています。なぜ、単にAIを入れるだけではうまくいかないのでしょうか。
溝辺 分かりやすく言えば「お問い合わせの電話は決まった文面で来るわけではない」ためです。質問の仕方は本当に人それぞれで、ご自身でも要件を整理しきれないままかけてこられる方もいます。例えば「知人が飲んでいたサプリメントが気になって、ここに電話するといいと言われたので電話しました」というように、状況だけをお話しになって、解釈をこちらに委ねるようなお電話も珍しくありません。ご購入されたいのか、商品について知りたいのかも分からない状態です。
このようなコール内容も含めてAIに対応させるために重要になるのが、AI側のガイダンス設計です。「ご購入のお電話でしょうか?」と適切に問いかけ、お客様の意図を引き出しながら、必要な情報を集めていく。このガイダンスをA/Bテストで検証しながら磨き込んでいく作業に、実は一番時間がかかります。想定した「質問の定義」から外れた電話にどう対応するか。ここが、コールセンターAIの成果を分けるところです。
Q4 | 近年、生成AIの精度向上が著しいかと思います。コールセンターのAI活用に変化はありますか。
溝辺 技術的に生成AIが対応できる部分は、確かに増えています。当社でも、言葉の揺らぎを吸収する部分などで生成AIを活用できるよう、開発を進めているところです。ただ、現実には費用とのトレードオフになります。すべてを生成AIで処理するとトークンコスト※がかさみ、現実的な利用は難しいでしょう。特にコールセンターはコストを厳しく見られる部門です。そこで当社は、必要なところにだけ生成AIを使い、それ以外は自社の機械学習技術で処理して、コストを抑える設計にしています。精度とコストのバランスを取れることも、私たちの強みだと思っています。
※生成AIの利用において発生する、処理量に応じた利用料
人とAIのハイブリッドを実現する「AIコラボコンタクトセンター」
Q 5| 近年は、生成AI×ボイスボットのBPOサービス「AIコラボコンタクトセンター」にも力を入れられています。どのようなサービスなのでしょうか。
溝辺 人とAIのハイブリッドを、オペレーションまで含めて提供するBPOサービスです。AIコラボコンタクトセンターは定型のパッケージを当てはめるのではなく、お客様の業務に合わせ、人がやるべき業務は人が担いながら、AIをどう組み合わせて運用するかまで設計します。例えば、大量に届くFAXを生成AIでデータ化して、処理を自動化する。一方で、受注対応は人が担った方が成果につながるので、人が対応しながらリードタイムを短縮して受注率を高めるべきです。
オペレーターが人として対応する場面も、AIが支えます。例えば金融系のように「言ってはいけないこと」が厳密に決まっている業務では、通話中の画面に禁止事項や関連資料をポップアップ表示して、正確に話せるように支援しています。また、テクニカルサポートのように覚えることが多い業務では、生成AIアシスタント「Buddy」がナレッジを学習してオペレーターを補助し、新人の負担を減らしています。
東京都、沖縄県、福岡市に常設してきたAIコラボコンタクトセンターですが、2026年4月には、新たな拠点として北九州市に141席のセンターを開設しました。福岡エリアは今後も人口増加が見込まれる、勢いのある地域です。その中でも北九州であれば、福岡市内からドアツードアで30〜40分ほどであり、現場のフォローがしやすいことも決め手になりました
コールセンターを設置している企業だけでなく、未設置の企業も。
まずは無料相談から
Q6 | どのような企業が、コールセンターへのAI活用を検討するとよいとお考えですか。
溝辺 電話対応の席が3席ほどあれば、十分に効率化の効果が出ると考えています。加えて、すでにコールセンターを持っている企業はもちろんのこと、コールセンターを設置していない企業においても活用できる可能性があります。例えば、10店舗を展開していて、各店舗で事務スタッフが電話を取り、いつも対応に追われている――そんな企業にも有効です。店舗ごとの電話を一つの窓口に集約してAI化すれば、現場の負担は大きく軽くなります。また、従業員が事務所にいない夜間や休日などの対応も可能となり、顧客満足度の向上にもつながります。
このように、コールセンターや電話応対の悩みは、会社ごとに本当にさまざまです。まずは気軽にTACTへご相談ください。ご相談やコンサルティングの段階で、費用はいただいていません。お話を伺いながら、どこにAIを使い、どこに人を残すべきか、御社に合った形を一緒に考えていきます。
コールセンターを「コストセンター」で終わらせない。TACT・溝辺和広社長が歩んだ事業変革の道
TACT株式会社 代表取締役社長の溝辺和広氏は、1973年、福岡県北九州市生まれ。1992年に大阪有線放送社(現・U-NEXT HOLDINGS)へ入社し、23歳で放送所所長に就任した。2010年、U-NEXTのマーケティング部門を母体とする戦略子会社「U-NEXTマーケティング」(現TACT)の設立に参画し、2011年から代表取締役社長を務める。2016年にはいち早くAIを用いた自動応答コンタクトセンターサービスを開発。2026年3月には著書『AIコンシェルジュがコールセンターを変える』(ダイヤモンド社)を刊行した。コールセンターAIのパイオニアに、これまでの歩みとこれからを聞いた。
「10年後は苦しくなる」――4人で始めたAI開発と、最初の成功事例
Q1 | まず、2010年に現在のTACTを立ち上げられた経緯からお聞かせください。
溝辺 当社は、U-NEXTのマーケティング戦略子会社としてスタートした会社です。当時のU-NEXTはWebと電話の両チャネルで顧客獲得を進めていて、私たちはその電話マーケティングを担う位置づけでした。ところが、協業していた通信キャリアの方針転換があり、さらにU-NEXT自体のWebでの獲得コストも大きく下がった。私たちが担っていた機能そのものが、必要なくなってしまったんです。
親会社からの仕事はなくなっていく。それでも、会社には350人の社員がいる。このような状況下で新たな仕事を模索した結果、当社はコールセンターの受託運営会社になっていきました。雇用を守るために走り回ったこの経験が、今の事業の原点になっています。
Q2 | 2016年には、いち早くAIを用いた自動応答サービスを開発されています。当時、どのような危機感をお持ちだったのでしょうか。
溝辺 2015年頃、この先10年、20年と考えたときに、コールセンター受託だけでは苦しくなるという感覚がありました。ちょうど第3次AIブームの時期です。「AIを使った事業をやろう」と決めました。当初は大手ITベンダーとの協業も検討したのですが、試作の段階でコスト感が合わず断念しました。最終的には、日本語の音声認識「AmiVoice」で高い実績を持つアドバンスト・メディア社と組んで、開発を始めました。
とはいえ、開発チームは4名ほどで、潤沢な資金があったわけでもありません。試行錯誤の連続でした。最初の転機になったのは、日本政策金融公庫様との事例です。受注のきっかけは、サービスが形になる前に記者会見を開いたことでした。「U-NEXTマーケティングがAIコールセンターを始める」と記事に取り上げていただけるほど反響があり、そこからいただいたお問い合わせの一つが、この事例に結びつきました。
顧客の期待値を「高めすぎない」ことの重要性
Q3 | 2026年3月に著書を出版されました。最も伝えたかったことは何でしょうか。
溝辺 一番伝えたかったのは、経営とコールセンターの関係です。多くの経営者は、コールセンターのコストをあまり見ていません。かかって当然の「サンクコスト」と捉えられがちなんです。しかし実際には、人件費は年々上がり続けており、経営者も「しょうがない」と思いながらコスト増を受け入れている。
このような状況を打破するには、AIを活用してコストを抑えながら、例えば対応時間を24時間体制に広げるなど、サービスを拡充して利益につなげていく発想が必要です。コールセンターにはコストセンターの面もありますが、そのコストは抑制できるものです。経営者の皆さんにそこを考えてほしい、というのが著書のメッセージです。
Q4 | 著書にある「AIは顧客の期待値を下げる」という視点も印象的でした。
溝辺 人が電話に出ると、お客様の期待値は上がるんです。「上司に代われ」と言われて上の者が出れば、期待値はさらに上がる。でも、オペレーションとしてできることは変わりません。企業としての対応には、当然ながら限界があります。これでは会社もお客様も得をしないんですよね。AIが一次対応を担うことで、その過剰な期待値の上昇を抑えられると考えています。
最近は、長時間に及ぶ理不尽な要求への対応からオペレーターを守るために、一次対応をAIコンシェルジュに任せたい、というご相談も増えてきました。料金未納のお客様への督促のように、人が対応すると負担が大きい業務をAIに任せる動きも、その一つですね。「お客様は神様」という考え方が少しずつ変わり、お客様への理解を深めた上で、対応にメリハリをつける企業が増えている。AIは、働く人を守るための現実的な手段にもなっています。
Q5 | 著書では多くの導入事例も紹介されています。特に印象的な事例をお聞かせください。
溝辺 著書では、コープこうべ様、ニッセン様、東京都羽村市様などの事例をご紹介しました。応答率が大きく向上したケースや、対応コストを5〜6割削減できたケースなど成果はさまざまですが、共通しているのは、業務をよく見た上でAIの適用範囲を設計したことです。
最近では、保険会社様や、ショッピングローンを提供する信販会社様から、契約時の「重要事項説明」を自動化したいというお問い合わせが増えています。「この内容でご契約します。重要事項はこちらです。お間違いないでしょうか」と確認し、企業としてエビデンスを取得していく業務は、ボイスボットとの相性が非常に良い領域です。
私たちは「冒頭切断」と呼んでいるのですが、AIだと分かった瞬間に電話を切られてしまうという離脱が、受注や問い合わせの業務では一定発生します。ところが重要事項説明は契約手続きの一部なので、この離脱がほとんど起きません。結果として9割台後半の完結率が出ています。お客様が「いいえ」と答えられた場合には、補足の説明を自動で再生して、改めて確認します。それでもご理解いただけない場合は営業担当がフォローする建て付けですが、実際には、そうしたケースはごくわずかです。
人とAIのハイブリッドの先に目指すのは「本当のDX」
Q6 | コールセンター業界は、今後どうなっていくとお考えですか。
溝辺 人とAIのハイブリッド化は、間違いなく進みます。その上で、現場に出向くフィールドサポートとの連携や、テクニカルサポート領域への展開が重要になると見ています。電源のリセット案内のような一次対応の自動化、日本に住む外国人の方が増える中での多言語対応、さらには音声だけでなく動画を使ったご案内など、チャネルはどんどん広がっていくはずです。
よく「DXで作業時間を何時間削減しました」という話を聞きますが、本来のDXは事業構造そのものの変革のはずです。コールセンターにとっての本当の変革はどこにあるのか。それを模索しながら、挑戦を続けていきます。
Q7 | 最後に、コールセンターのAI活用を検討している読者へ、メッセージをお願いします。
溝辺 少しでも関心があれば、まずはTACTにご連絡ください。ご相談の段階で費用はいただきません。私たちはAIを「売る」のではなく、御社の業務のどこにAIを使い、どこに人を残すべきかを一緒に考える会社です。コールセンターの悩み事を、気軽にぶつけていただければと思います。